アジア・トレイル・マスター(ATM)シーズン11ファイナルでネパール勢が男女完全優勝を果たし、間髪入れずにラオスでシーズン12が開幕。国内では「ハセツネCUP」で吉住友里選手が史上3人目の3連覇、田村健人選手が悲願の初制覇を達成。さらに台湾の「跑旅(ラン旅)」エキスポや香港エリートの再起劇など、国境を越えて連動する秋のアジアトレイル最前線をお届けします。
サブタイトル:
🏔️ ATMファイナル決着&S12即開幕: ベトナムの熱戦でネパール勢が男女完全制覇、ラオス・ルアンパバーンで新シーズン始動
🇹🇼🇭🇰 「跑旅(ラン旅)」と香港コミュニティの熱気: 台湾で観光×走る文化が爆発、秋冬レースシーズンへ
🏔️ 編集長レター(Editor’s Note)
こんにちは、GO ASIA TRAIL です。
秋の深まりとともに、アジア全域のトレイルランニングシーンが年間で最も熱いピークタイムを迎えています。先週の GO ASIA TRAIL Weekly #01 でもお伝えした香港・台湾の秋開幕に続き、今週は東南アジアと日本国内を揺るがすビッグニュースが続々と飛び込んできました。
ベトナム北部のムーカンチャイで開催された「アジア・トレイル・マスター(ATM)」シーズン11ファイナルでは、灼熱と過酷なアップダウンを制したネパール代表チームが男女アベック優勝を達成し、昨シーズン日本チームに奪われた国別年間王者の座を奪還。その熱気が冷めやらぬ中、ラオスでは早くも新シーズン「シーズン12」の開幕戦がスタートしました。
一方、日本国内の秋の頂上決戦である「第34回ハセツネCUP(日本山岳耐久レース)」では、国際舞台でも活躍するトップランナーたちが秋の奥多摩を疾走。以前 UTMB 2026分析 で触れた「個の強さ」と「海外ブランド・プロチーム所属による環境変化」を象徴するような激走が見られました。
国境を越えてランナーが交錯し、カルチャーが混ざり合うアジア太平洋のトレイル最前線を、今週も現地一次情報とともにお届けします。
🧭 今週の深掘りトピックス(Feature Picks)
1. ネパール勢の圧巻完全優勝――ATMシーズン11ファイナルと「高所民族」の強さの構造
10月初旬、ベトナム北部の棚田地帯ムーカンチャイ(Mu Cang Chai)を舞台に繰り広げられた「2026 Asia Trail Master Championship Final」。アジア各国から年間ポイント上位の代表選手が集結したこのチャンピオンシップで、ネパール勢が凄まじい強さを見せつけました。
男子はオムラル・シュレスタ(Homlal Shrestha)選手が灼熱のタフなコースを7時間14分という驚異的なタイムで走破し、2位に15分以上の大差をつけて圧勝。女子もスンサリ・ロカヤ(Sunsari Rokaya)選手が制し、ネパール代表が個人男女タイトルを独占。国別対抗戦でも、前回王者の日本チームから見事に王座を奪還しました。
日本勢では油井太智選手が男子総合12位(日本勢2位)に食い込み、喜多村久選手に続く健闘を見せたものの、30度を超える高温多湿と急峻な山岳パートが連続するアジア特有のコースにおいて、標高2,000m超の日常と厳しい生活環境で培われたネパールランナーのフィジカルと耐暑性は圧倒的でした。かつてヨーロッパ中心だったトレイル界において、ヒマラヤを擁するネパール勢が組織的な遠征体制を整えつつある点は、今後のアジア・世界戦線を占う上で見逃せない潮流です。
🌏 エリア別ダイジェスト(Regional Roundups)
🇭🇰 香港(Hong Kong)
「鷹鷹」曾進傑の海外移住と初OCC挑戦への決意
香港トレイル界の誰もが知るトップランナー「鷹鷹」こと曾進傑(Tsang Chun-kit)選手が、海外移住から半年以上を経て現地の『運動筆記 HK』のロングインタビューに登場。生活環境が激変するなかでも山を走る情熱は変わらず、初挑戦となるUTMB-OCCに向けて「タイムや順位に囚われず、自分の身体の声に従って原点の喜びで走りたい」と語りました。香港コミュニティのアイコンである彼の挑戦に、現地から熱いエールが送られています。香港ウルトラ・フィッシュ&シープ(Ultra Fish N Sheep 152km/70km)決着
香港屈指のテクニカルルートを繋ぐウルトラ・フィッシュ&シープが10月17日に開催。女子では香港を拠点に活動するネパール人ランナー、ディル・リムブ(Dilu Limbu)選手が11時間52分で圧勝。来季のATMネパール代表入りへ名乗りを上げました。
🇹🇼 台湾(Taiwan)
長榮航空(EVA Air)主催「跑旅航站 觀光運動博覽會」が松山文創園區で開催
台湾では10月22〜25日の4日間にわたり、長榮航空による初の大規模スポーツツーリズムEXPO「跑旅航站(Run Travel Terminal)」が開催されました。台湾ランナーの海外遠征熱(日本や欧米のマラソン・トレイル大会)と、インバウンド誘致を直結させる意欲的な試みで、ブースには連日多くのランナーが殺到。「走るために旅をする(跑旅)」カルチャーの定着を印象づけました。台北世貿で「HARCO 8種混合運動」開催――ハイブリッドフィットネスの熱波
世界的なHYROX人気と呼応するように、ランニングと8つの筋力・持久系ワークアウトを組み合わせた「2026 HARCO 挑戰賽」が10月17〜18日に台北世貿一館で開催。トレイルランナーやロードランナーがクロストレーニングとして参入する動きが加速しています。
🇨🇳 中国(China)
秋のウルトラトレイルシーズン本格化とブランドチームの動向
中国本土では国慶節以降、寧波、四ツ姑娘山、雲南などで100km〜100マイル級の本格山岳レースが連週開催。Kailas FUGAアスリートを中心とした中国エリート勢は、UTMB本戦を終えた後の秋シーズンでも驚異的な連戦スケジュールをこなしており、アジア各地の大会(ATMやタイ・ベトナムの招待レース)へのエントリー攻勢を強めています。
🌏 東南アジア & ATM(Southeast Asia & Asia Trail Master)
ATMシーズン12開幕戦「ルアンパバーン・トレイル(ラオス)」
息つく暇もなく10月10日に開幕したATM第12シーズン。世界遺産の街を駆け抜けるラオス・ルアンパバーン75Kでは、ポルトガルのエンリケ・ニコラウ(Henrique Nicolau)選手が9時間12分で快勝し、初代リーダーに。女子は香港のジェシカ・ラム(Jessica Lam)選手が見事な優勝を飾りました。ベトナム・ジャングル・マラソン(VJM 70km)
10月17日に開催されたプーロン自然保護区を巡る名物レースVJM(Grandmaster Quest対象)では、フランスのパコム・ポワニャン(Pacome Poignant)選手が7時間25分で男子優勝。女子はATMファイナル5位から連戦となったベトナムのグエン・ゴック・アイン(Nguyen Ngoc Anh)選手が10時間02分で制覇しました。ATM新パートナーシップ&拠点発表
ATM公式アパレルとして香港発の高機能ギアブランド「T8」がシーズン12も契約を更新。さらにグランドマスター称号のバッジ授与拠点「Grandmaster Hub」として、香港の「Gone Running」およびマレーシア・コタキナバルの「Kolumpa」が正式認定されました。
🇯🇵 日本(Japan)
第1回 佐渡ゴールドトレイル(SADOISLAND GOLD TRAIL 50k)開催
10月17日、新潟県佐渡島で初開催となる「佐渡ゴールドトレイル50k」が実施されました。金山遺産と起伏に富んだ自然を活かしたコース設計で、日本国内における離島・アドベンチャーツーリズム型の新たなデスティネーションレースとして好評価を集めています。ギア動向:対話型AIコーチ搭載の「SUUNTO Race 3S」発表
SUUNTOから46mm/約56gの軽量ボディに対話型AIコーチ機能を統合した新世代GPSウォッチ「Suunto Race 3S」が10月22日に発表。トレイルランナーの間でもトレーニング解析のAI活用が急速に身近になっています。
🌐 グローバル・カルチャー(Global & Culture)
バックヤード・ウルトラ世界記録更新:ベルギーのGeerts & Steyaertコンビが3度目の金字塔
1周6.706kmを1時間ごとに走り続ける過酷な「ビッグズ・バックヤード・ウルトラ」。ベルギーの二人組メリジン・ヘールツ(Merijn Geerts)とイヴォ・ステヤールト(Ivo Steyaert)が、互いを高め合いながら再び世界新記録を更新。終わりのない耐久レースの極限が更新されました。トレイルランニング市場が140億ドル突破――女性ランナー参入の急伸
米英の最新市場データによると、世界のトレイルランニング市場は年率約8%の成長を続け、140億ドル(約2.1兆円)規模へ拡大。Stravaのログ解析では女性ユーザーによるトレイルラン記録が前年比倍増となっており、競技志向だけでなく「自然の中でのマインドフルネス・自由」を求めるライフスタイル型ランナーの流入が顕著です。
🗓️ 直近の注目アジアレース日程(Upcoming Calendar: 11月〜12月)
秋から初冬にかけてのアジア主要レーススケジュールです。旅程計画やエントリーの参考にどうぞ!
2026年11月07日 | 🇻🇳 Lam Dong Trail(ベトナム・ダラット)/ ATM S12
2026年11月08日 | 🇭🇰 Hysan Island Hike & Run(香港・ハッピーバレー)/ Action Asia(23km/15km/6km)
2026年11月08日 | 🇭🇰 Border Go! 慈善越野跑(香港・沙頭角)/ 保育チャリティトレイル
2026年11月14日 | 🇵🇭 Mt Apo Sky Race(フィリピン・ダバオ)/ ATM Grandmaster
2026年11月21日 | 🇵🇭 SC 70(フィリピン)/ ATM S12
2026年11月22日 | 🇹🇭 Thailand 500(タイ)/ ATM Grandmaster
2026年11月26日〜28日 | 🇳🇵 Nepal Action Asia 3 Day Ultra(ネパール・カトマンズ)/ 100km & 60km ステージレース
2026年12月06日 | 🇭🇰 Sai Kung 50(香港・西貢)/ Action Asia HK50シリーズ(50km/36km/22km/12km)
2026年12月12日 | 🇹🇼 Taiwan Action Asia 50(台湾・桃園石門水庫)/ 50km/26km/12km
2026年12月13日 | 🇯🇵 伊豆トレイルジャーニー(ITJ 70k)(日本・静岡伊豆半島)/ ATM S12
✍️ 編集後記(Editor’s Outro)
今週のニュースを振り返って強く感じるのは、「アジアのトレイルシーンにおける重層化とプロフェッショナリズムの加速」です。
ネパール勢がATMで見せた高所アドバンテージと圧倒的な競技力、吉住選手のように海外ブランドのサポートを受けながら3連覇を成し遂げる日本のトップ選手、そして台湾や香港で見られる「跑旅(ラン旅)」やハイブリッド種目(HARCO/HYROX)との融合――。
トレイルランニングはもはや単なる「週末の山登りラン」を超え、旅・ギア・科学・コミュニティが複雑に絡み合う独自のカルチャーエコシステムへと進化しています。国境を越えて互いのトレイルを行き来することが容易になった今、アジア全体がひとつの大きなプレイグラウンドになっていることを実感します。
皆さんの秋のトレイルの予定はいかがですか?
「このレースに出るよ!」「現地のエイド情報が知りたい」といったコメントやご意見も、ぜひSubstackのコメント欄やSNSでお気軽にお寄せください。
それでは、素晴らしいトレイルウィークを! Happy Trails!
GO ASIA TRAIL 編集部(blog.goasiatrail.com)


